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私の下地

 

 アラフィフになり、自分の作品をゆっくり見つめる時間が出来ました。

若い頃は、岩絵具の特性と格闘しながら制作をしていたけれど
3.11を期に私は箔だけで絵を描くようになりました。
技法を好む絵画ファンが多いことは、私としてはアート界において
非常に悲しい日本の現実だなと思う反面
自分の作品の手法が誰にも解らないこと
あまりに勘違いしている人間が多すぎるので
少しずつ書き遺すのも良いかなと思い
はじめます。

 

先ず日本画の材料を簡単に書き記せば

作品を描く支持体(紙や木、絹など)

接着剤(主に膠や樹脂、糊)

絵の具(岩、土、金属、染料)

に分けられます。

 

私の使用する材料は

和紙と膠と箔のみになります。


技法と言っても単純で

支持体への箔の安定した定着と

箔の劣化(焼き)のコントロールが主になりますが

箔は、金(白金)以外

全て大気と反応して変色します。


私の作品は

その変色を色彩として描いているので

制作中は色の変化に敏感なのです。

 

 

今回は下地について。

 

支持体(麻紙や木、絹)に箔を打つ時にはそれぞれ礬水の濃度と回数が違います。

礬水とは、膠(動物性コラーゲン)に明礬(複塩の総称)を加えて作る水溶液。

耐水性を加えるかわりに、酸化を促します。

あ、スーパーで売ってる生ウニの型崩れを防いでいるのは
この明晩です。

 

 

 私の場合、礬水を多様するため、必ず支持体に胡粉(カルシウム)

を引いてから箔を打つようになりました。

胡粉の有無、樹脂製の下地材など

色々試したアラフィフともなると

試行錯誤の結果とも言えます。

 

 

 胡粉はできる限り細かくしたものを3回に分けて引きます。

厚みが出ると後々礬水の伸縮に絶えられず支持体に乗った胡粉の層から割れて剥落するので

ここは慎重、丁寧に作業します。

 

 

ここで絶対にやってはいけないのは

画面を手で触ること。

皮脂が付き、以降の箔打ちに多大な影響が出ます。

ベビーパウダーや手袋を使い、画面への油分には十分に注意します。

無論、箔打ちにあかし紙もダメです。

 

次回

「皮脂やロウ、ポマード付きでは美しく焼けません」

私の箔打ちについて記します。

 

更新

12月15日

歳時記  靄


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