私の好きなものの一つに、天候があります。
暖かい日差し。草木を潤す雨。種を遠くへ運ぶ風。。
ここには天気を題材にした作品を掲載しています。
青
黄色
白のシマシマ
必要以上に名前を主張した
水泳パンツ
バスタオルに水中眼鏡
フーセンガム
前カゴに放り込んだら
市営プールへ
あの公園で坂本君も
待っている
彼もガムを噛んでいるはず
思い切りペダルを漕ぐ
水から上がった後の
バスタオルは暖かくて気持ちいい
塩素の匂いがたっぷり
染み付いている
更衣室は緑瑠璃色
何百と並んだコインロッカー
誰かが取り忘れた100円玉は
アイスキャンディーに代わる
少しぎしつく髪の毛を
なびかせたら
ゆっくりとペダルを漕ぐ
夏の昼下がり
シュワシュワとこぼれ出す
慌てて口元に運べばコカラコカラとビー玉が遊ぶ
小学校脇に在った和光堂という駄菓子屋が
僕らの少ない小遣いの使い道だった
今まで沢山の事があった
泡の数ほど
花の数ほど
沢山の事があった
そんなことを想わせた風景の向こうには
まだまだ沢山の事が待っているのだろうか
丁寧に踏み潰しながら
向かう
夢の間
冬の光
確かに
鳴いていた
寒い朝
いつからか
ゲリラと呼ぶようになった
少し悪意に満ちてそう呼ばれた
雨
私は小さい頃からワクワクする
台風や土砂降りの日は表にでて
川のように変貌したいつもの道路に
笹船やらゴムボールを流して
行き先を見守ったものだ
雨が多くて困り
雨が枯れて困り
先行きが見えず困り
幸せ過ぎて困る
こんなに困り続けているのに
困ることには慣れないのだろうか
波風のない空気を
安心と呼ぶのだろうか
私はこの波風を吸い込まないと
ハミングができない
雨が降ってきた
スキップしながら
進もう
懐かしさって何だろう
似ていることがそのまま直結するわけではなさそうだ
楽しかった事を懐かしむとき
苦しかった事も懐かしんでいる
笑いながら少し悲しくなったりする
懐かしさ
その引き出しが開いた本当のきっかけが
決まってわからない
天気がいいからか
風が気持ち良いからか
少し肌寒いからか
幾万の記憶をピースにして
一瞬で組み上がるジグソーパズル
そんな形をしているような気がした
綺麗な朝日が差し込んでいても
ついうとうと
枕木のリズムを枕にすると
何故にああもよく眠気に襲われるのだろうか
端っこの座席ならばなおさらだ
住宅を飛び越えトンネルを抜け橋を渡り
うとうと眠る間にも自分は高速で運ばれてゆく
綺麗な朝日の中
一日の始まりを森の散歩からはじめる男がいた
橋げたの下を通ったその時
私は通り過ぎるその電車の中で
つい
うとうと
今日も霧雨で霞む風景に目もくれず
つい
うとうとと
うたたねる
いつまでボーッとしたままで
ぼんやり突っ立っているんだろう
そろそろ目を醒ましてほしいのに
どんどん霞んでいく
今はもう
よくみえない
思い出せない。